
SSPMとは
SSPM(SaaS Security Posture Management)の役割と定義
SSPMとは、企業が利用するSaaSの「設定ミス」や「権限の不備」を自動で監視し、正しい状態へ修正・管理するセキュリティツールです。主にMicrosoft 365、Google Workspace、Salesforceなど、企業の業務基盤となる主要なSaaSが保護対象となります。
SaaSの利便性とセキュリティを両立するための姿勢管理
SaaSはいつでもどこからでも利用できる一方で、利用者ごとに柔軟に設定を変更できるという特性が、そのままセキュリティの抜け穴が生まれやすいという側面を持っています。SSPMは、このSaaSの利便性を保ったまま、ガバナンスの効いた安全な運用を実現する仕組みとして機能します。
なぜ今SSPMが必要か?
総務省の調査によると、企業のクラウドサービス利用率は年々上昇しており、2024年には80.6%の企業がクラウドサービスを利用しています。このように、SaaSをはじめとしたクラウドサービスの利用が急増する昨今、情報漏えいの原因の多くは、「外部のサイバー攻撃」から「内部の設定ミス」へと変化しています。この人為的なエラーを仕組みで防ぐために、自動で監視を続けるSSPMが必要となります。

出典:総務省「情報通信白書令和7年版」を基に作成
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html
混同しやすい「CSPM」との違い
どちらもクラウドの設定ミスを防ぐツールですが、守るべき対象が異なります。CSPMはAWSなどの「インフラ(IaaS/PaaS)」を監視し、SSPMは「業務アプリ(SaaS)」を監視するという明確な役割の違いがあります。
関連記事:CSPMとSSPMの違いとは?ツールの見極め方と「シャドーIT」対策
SaaS利用に潜む3つの課題
SaaSは手軽に導入できる反面、下記のようなセキュリティリスクが存在します。
個別導入(シャドーIT)による管理のブラックボックス化
各事業部門がSaaSを契約して利用したり、あるいは社員が独自にツールを利用するなど、情報システム部門が把握しきれない「シャドーIT」が急増しています。これにより、どのデータがどのサービスに存在しているのかが可視化できず、管理がブラックボックス化してしまいます。
退職者や異動者のアカウント・権限の消し忘れ
SaaSごとに管理が分散していると、組織変更の際にアカウントの削除漏れが発生しやすくなります。不要な特権を持ったまま放置されたアカウントは、不正アクセスの入口として機能してしまうリスクがあります。
危険なサードパーティ製アプリとの無許可連携
業務効率化のために、社員が独断で未承認アプリをSaaSに連携させてしまう課題です。この無許可連携を通じて、サードパーティ製アプリがSaaS内のデータへアクセス可能な状態になることが最大のリスクとなります。
【比較表】SSPMとCASBの違い
SaaS環境を守るセキュリティソリューションとして、SSPMと「CASB(キャスビー)」はよく比較されます。それぞれの監視方式や役割の違いを一覧表で確認してみましょう。
比較項目 | SSPM | CASB |
|---|---|---|
監視方式 | API経由の設定監視 | 通信経路のデータ・振る舞い監視 |
目的 | SaaS自体の防御力向上 | 従業員の不正利用・持ち出し防止 |
役割 | 事故を未然に防ぐ(設定レベル) | 利用中のリスクを制御(実行レベル) |
導入のしやすさ | 既存環境に影響を与えないAPI連携 | ネットワーク構成の考慮が必要 |
監視方式の違い
システムが脅威を検知するためのアプローチや着眼点に明確な違いがあります。
- SSPM: APIを利用したSaaS内の設定や権限の監視
- CASB: ユーザー端末とクラウド間における、通信経路上のデータや振る舞いの監視
目的の違い
導入によってどのような脅威を排除したいのかという、根本的なセキュリティ対策のゴールが異なります。
- SSPM: 設定の抜け穴を塞ぎ、SaaS自体の防御力が向上
- CASB: 機密データの持ち出しや不正アクセスなどの防止
役割の違い
インシデントに対して、どのように介入するかという役割分担の違いです。
- SSPM: 意図しない公開設定などを事前検知・修正し、設定レベルでの事故を未然に防止
- CASB: ファイルのダウンロードなど危険な行動を検知し、実行レベルでのリスクを制御
導入のしやすさの違い
実際にツールを導入・運用する際の情報システム部門の負担や、既存ネットワークへの影響度に違いがあります。
- SSPM: クラウド同士のAPI連携のみで完了。既存ネットワーク環境に影響を与えない
- CASB: 既存のネットワーク構成の変更を伴うため導入設計が複雑

SSPMの主要な機能
SSPMは、SaaSを安全に運用するために主に以下の4つの機能を提供します。
設定の継続的な監視と自動修復
ファイルの全公開や多要素認証の無効化など、SaaSの危険な設定を継続的に監視します。不備を検知した際はアラートを出すだけでなく、元の安全な設定に自動修復する機能も備えています。
アクセス権限とユーザーの可視化
誰が、どのSaaSに対して、どのような権限を持っているかを一元的に可視化します。放置されているアカウントや過剰な特権を持つユーザーを特定し、権限の適正化を支援します。
サードパーティ製アプリの連携監視
SaaSに連携されている外部アプリを洗い出し、要求しているアクセス権限が妥当かを評価します。危険なOAuth連携などを検知し、不要または過剰なアクセスを遮断することでデータ保護を強化します。
ポリシー準拠チェック
現在のSaaSの設定状態と、以下のセキュリティポリシーを自動で照合し、違反している箇所がないかをチェックします。
- 国際的なセキュリティ基準: CIS Controlsなどのグローバルスタンダード
- 会社独自のセキュリティルール: 自社で独自に定めた運用ポリシー
これらの基準と照らし合わせることで、ポリシーから逸脱した危険な設定をいち早く特定し、コンプライアンスを維持します。
導入検討のステップ:自社はどこから始めるべきか
SSPMを効果的に導入・運用するためには、段階的なステップを踏むことが重要です。まずは全体のロードマップと成功のポイントを以下の表で確認しましょう。
順序 | 取り組み内容 | 対象となるサービス例 |
|---|---|---|
ステップ1 | 全社導入している「基盤SaaS」の可視化(スモールスタート) | Microsoft 365、Google Workspace など |
ステップ2 | 事業部門が独自に利用する「個別SaaS」への拡張 | Salesforce、Box など |
ステップ1:基盤SaaSの可視化からスモールスタート
まずは、Microsoft 365やGoogle Workspaceなど、全社で利用していて、機密情報が集まりやすい基盤SaaSに絞って監視を始めます。全社的な土台の安全性を確保するとともに、対象を絞ることで、初期の運用負荷を抑えながらスモールスタートするのがおすすめです。
ステップ2:個別SaaS(SalesforceやBox等)へ監視対象を拡張
基盤SaaSでの運用が軌道に乗ったら、SalesforceやBoxなど、事業部門が利用している個別SaaSへと監視対象を広げます。これにより、組織全体のセキュリティレベルのばらつきを解消し、全社的なガバナンスを統一します。
導入を成功させる鍵
SSPMを運用する上で、アラート発生時の対応ルールを決めておくことが成功の鍵となります。情報システム部門がすべて対処するのではなく、事前に役割分担を明確にしておくことが運用の成否を左右します。具体的には、以下の項目を整理しておきましょう。
- アラートの一次受け: 危険な設定を検知した際、誰が最初に確認してリスクを判断するのか
- 現場との連携フロー: 情シス部門と、SaaSを管理している事業部門とで、どのように連絡を取り合うのか
- 修正作業の担当者: 誰がSaaS側の設定を安全な状態へ修正するのか
このように「誰が・何を・どうするのか」という体制をあらかじめ作っておくことで、現場のビジネススピードを阻害することなく、確実で安全なSaaS運用が実現します。
まとめ:利便性と安全性のトレードオフを解消する、SSPMという選択肢を
SaaSの普及により、企業セキュリティは従来のネットワーク境界に加え、アプリケーション内部やID管理へと重心がシフトしています。たとえ強固なネットワークを構築していても、SaaS内部の設定を1つ間違えれば、致命的な情報漏えいにつながるのが現代のクラウド環境です。
そんな環境下において、SSPMは膨大な設定項目を自動で監視し、設定ミスのような人為的エラーを未然に防ぐ「最後の砦」として機能します。さらに、ユーザーの危険な通信を制御する「CASB(またはSSE)」を組み合わせることで、SaaS本来の利便性を一切損なうことなく、安全で強固なクラウドセキュリティ体制を構築していきましょう。
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