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XDRとは?攻撃の全体像を可視化する次世代セキュリティをわかりやすく解説

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XDRとは?攻撃の全体像を可視化する次世代セキュリティをわかりやすく解説
サイバー攻撃がエンドポイントだけでなく、クラウド、ネットワーク、メール、さらにはID情報などへと拡大する中、個別のセキュリティ製品が発する「点」のアラートだけでは攻撃の全体像を把握することが困難になっています。この課題を解決する次世代のセキュリティソリューションが「XDR」です。本記事では、XDRの基本的な役割から、その必要性、導入のメリットと課題、そしてEDRやMDRといった関連ソリューションとの違いまでを体系的に解説します。

XDRの基本と重要性

XDR(Extended Detection and Response)とは?

XDRとは、PCやサーバーといったエンドポイントだけでなく、ネットワーク、クラウド、メール、ID情報など、複数のセキュリティレイヤーからログデータを収集し、それらを横断的に分析することで、脅威の検知(Detection)と対応(Response)を行うソリューションです。従来のセキュリティ対策が「点」で脅威を捉えていたのに対し、XDRは点在するアラートを相関分析によって繋ぎ合わせ、一連の攻撃シナリオとして可視化することを目的としています。これにより、攻撃者がどのような経路で侵入し、どのような活動を行ったのか、その全体像を素早く正確に把握することが可能になります。

XDRの主な機能と特長

XDRは、主に以下の4つの機能を通じて、従来のセキュリティ対策では実現が難しかった高度な脅威分析と対応を可能にします。

  • 広範囲なデータの収集と正規化、可視化:
    エンドポイント、ネットワーク機器、クラウド環境、メールゲートウェイ、ID管理システムなど、異なるセキュリティ製品やシステムからログデータを自動的に収集し形式を統一化(正規化)します。これにより、一元的な管理画面で組織全体のセキュリティイベントを包括的に可視化します。
  • 脅威の相関分析による攻撃全体像の把握:
    収集した多様なデータをAIや機械学習を用いて相関分析します。個々のアラートが示す断片的な情報から、その背後にある攻撃の全体像や侵入経路を明らかにします。これにより、単体のアラートでは見過ごされがちな潜在的な脅威も検知できるようになります。
  • 分析・対応の効率化と自動化:
     脅威の優先順位付けや、特定の対応アクション(例: 感染端末のネットワーク隔離、不正プロセスの停止など)を自動化する機能を提供します。これにより、アナリストがアラートの「ノイズ」に惑わされることなく、重要な脅威の分析に集中できるよう支援します。
  • プロアクティブな脅威ハンティング:
     XDRが収集・蓄積した広範なデータを基に、まだ表面化していない(あるいは検知されていない)脅威の痕跡や潜在的な脆弱性を専門家が能動的に探索(スレットハンティング)する機能を提供します。これにより、攻撃者がまだ攻撃を仕掛ける前に、あるいは攻撃が初期段階にあるうちに、その兆候を発見し、先手を打って対処することが可能になります。

なぜ今XDRが必要なのか?注目される背景

XDRが急速に注目を集めている背景には、ビジネス環境の変化に伴う攻撃対象領域の拡大と、サイバー攻撃そのものの複雑化・巧妙化が深く関係しています。

サイバー攻撃の複雑化と攻撃対象領域の拡大

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、クラウドサービスの利用拡大、リモートワークの常態化により、企業のITインフラはかつてなく分散・複雑化しています。攻撃者が狙うポイントはPCやサーバーだけでなく、クラウドの設定不備やVPN機器、個人の業務用メールなど多岐にわたっています。こうした分散した環境では、セキュリティイベントを個別に見ていても、組織全体を狙った巧妙な攻撃の全貌を捉えることはできません。

EDRだけでは追いきれない「点」のアラートをつなぎ、「線」で攻撃を捉える必要性

EDRはエンドポイントの保護に非常に有効であり、多くの企業で導入が進んでいます。しかし、その監視範囲はPCやサーバーといったエンドポイントに限定されます。そのため、EDR単体では、エンドポイント外で発生した攻撃の初期段階や、ネットワークを介した横展開、クラウド環境での不正な活動などを検知・可視化することはできません。

XDRは、EDRを含む各領域で発生する「点」のアラートやログを繋ぎ合わせ、攻撃キャンペーン全体を「線」としてさらには「面」として捉えることで、より迅速で正確な対応を可能にします。攻撃の全体像を早期に把握し、被害が拡大する前に効果的な対策を講じることが可能になります。

情報セキュリティ10大脅威 2025 [組織] から見るXDRの必要性

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃といった、複数の段階を経て実行される複雑な脅威が上位を占めています。これらの脅威は、単一のセキュリティ製品や局所的な防御では対処が困難です。エンドポイント、ネットワーク、クラウドなど複数の領域にまたがる活動を横断的に可視化できるXDRのアプローチは、このような複雑な脅威から組織を守る上で極めて有効であり、不可欠なセキュリティ対策であると言えるでしょう。

情報セキュリティ10大脅威 2025 [組織]

順位

「組織」向け脅威

初選出年

10大脅威での取り扱い(2016年以降)

1

ランサム攻撃による被害

2016年

10年連続10回目

2

サプライチェーンや委託先を狙った攻撃

2019年

7年連続7回目

3

システムの脆弱性を突いた攻撃

2016年

5年連続8回目

4

内部不正による情報漏えい等

2016年

10年連続10回目

5

機密情報等を狙った標的型攻撃

2016年

10年連続10回目

6

リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃

2021年

5年連続5回目

7

地政学的リスクに起因するサイバー攻撃

2025年

初選出

8

分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)

2016年

5年ぶり6回目

9

ビジネスメール詐欺

2018年

8年連続8回目

10

不注意による情報漏えい等

2016年

7年連続8回目

出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025 [組織]」を基に作成
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2025.html

XDR導入メリット

XDRを導入することで、企業は脅威に対する検知・対応能力を飛躍的に向上させることができます。XDRがもたらす具体的なメリットは以下の通りです。

XDR導入のメリット

主な効果と内容

脅威検知・対応の迅速化と精度向上

複数のソースから収集したデータを統合的に分析することで、個別のノイズ(誤検知)を削減し、真の脅威を高い精度で特定します。これにより、インシデントの初期段階での迅速な検知と、的確な対応を可能にします。

運用負荷の軽減と効率化

従来の個別製品でのアラート対応は、大量の誤検知や重複によって担当者の負担を増大させていました。XDRはアラートの一元化と分析の自動化により、セキュリティ担当者が確認すべきアラート数を大幅に削減し、運用負荷を大きく軽減します。

インシデント対応時間の短縮

攻撃の全体像を素早く把握できるため、被害の特定から封じ込め、復旧までの時間(MTTD: Mean Time To Detect / MTTR: Mean Time To Respond)を大幅に短縮できます。これにより、サイバー攻撃による事業への影響や損害を最小限に抑えることが可能になります。

包括的なセキュリティ可視化によるリスク低減

エンドポイントだけでなく、ネットワーク、クラウド、メールなど、IT環境全体の可視性を高めることで、潜在的な脆弱性や攻撃の兆候をプロアクティブに発見・対処できるようになります。これにより、情報漏えいやシステム停止などの重大なセキュリティリスクを低減します。

高度な脅威ハンティングの実現

広範囲なデータを活用することで、未知の脅威や巧妙なゼロデイ攻撃に対しても、専門家が能動的に脅威の痕跡を探索し、早期発見・対処することが可能になります。これにより、より強固な防御体制を構築できます。

XDR導入で直面する「運用」の課題

XDRは多くのメリットをもたらす一方、その導入と運用には高いハードルが存在することも事実です。高度なテクノロジーであるため、製品の選定や既存システムとの統合が複雑であり、効果を最大限に引き出すには相応のスキルとリソースが求められます。

XDR導入の主な課題

課題の概要

製品選定と統合の複雑さ

市場に多様なXDR製品が存在し、自社環境に合ったアーキテクチャを選定することが難しい。既存セキュリティ製品やITインフラとのデータ連携・統合が複雑で、高度な技術力や専門知識を要する。

高度な運用スキルと専門人材の不足

収集された多様なログを横断的に分析し、そこから攻撃の兆候を読み解き、インシデント対応を行うための高度なスキルを持つ人材の確保・育成が極めて困難である。

データ基盤への高い要求とコスト

膨大なログを長期間保存・分析するためのデータ基盤が必要となり、高額なインフラコストが発生する可能性がある。

効率化されても残る対応・分析負荷

XDRが分析プロセスの一部を自動化し、アラートの優先順位付けを行うことで効率化は可能だが、最終的なインシデント判断や対応は人間に依存するため、24時間365日の監視・対応や、専門家による分析・対応の負荷は依然として残る。

XDRの効果を最大化する「MDRサービス」

XDR導入後に直面する、高度な運用スキルや24時間監視体制といった「運用」の壁。この課題を解決し、XDRのポテンシャルを最大限に引き出すための有効な選択肢がMDR(Managed Detection and Response)です。

MDRとは、企業のセキュリティ環境を24時間365日体制で専門家が監視し、脅威の検知、分析、対応までを提供するマネージドセキュリティサービスです。MDRベンダーは、XDRの技術基盤を活用しながら、自社の高度なノウハウと人材を組み合わせることで、企業が自前では実現が難しいセキュリティ運用を提供します。

MDRの導入メリット

MDRを導入する最大のメリットは、XDRが持つ高度な機能を専門家に任せることで、自社に専門人材がいなくても最大限に活用できる点です。これにより、高度なスキルを持つ人材の不足や、24時間監視体制の構築といった課題を解決できます。セキュリティ担当者は日常的なアラート対応から解放され、より戦略的なセキュリティ企画などの業務に集中できるようになり、組織全体のセキュリティ運用が向上します。

No.

メリット

主な価値・効果

1

24時間365日の脅威監視と迅速なインシデント対応

- 夜間や休日を問わず専門家が脅威をリアルタイムで検知・分析
- 迅速な初期対応により被害拡大を防止し、ビジネスへの影響を最小限に抑える

2

高度な専門知識を持つセキュリティ専門家による脅威分析と対処

- 最新の攻撃手法や未知の脅威にも常にアップデートされた専門知識で対応
- 高度な分析と的確な判断により、自社だけでは困難な高度な防御体制を実現
-高度なスレットハンティングにより、潜在的な脅威を早期に発見

3

セキュリティ人材不足の解消と社内リソースの最適化

- セキュリティ専門人材の採用・育成にかかる時間とコストを削減
- 社内IT担当者を日常的なセキュリティ運用業から解放し、本来の業務へ集中させ、生産性を向上

4

インシデント被害の最小化によるビジネス継続性の確保とコスト削減

- サイバー攻撃によるシステム停止や情報漏洩などの事業停止リスクを軽減
- 復旧コストや企業の信用の失墜といった損害を最小限に抑制
- インシデントによる被害額を大幅に削減

MDRはどんな企業に向いているか

MDRは、特に以下のような課題を抱える企業に適しています。

  • XDRやEDRを導入したが、専門知識やリソース不足でその高度な機能を十分に活用できていない企業
  • 24時間365日のリアルタイムな脅威監視と迅速なインシデント対応を実現したい企業
  • セキュリティ担当者が他のIT業務と兼任しているなどで、自社リソースでの運用負荷を軽減したい企業
  • 高度なインシデント対応やプロアクティブな脅威ハンティングを専門家の支援のもとで実施したい企業
  • 金融、医療、製造など、規制対応が厳しく、インシデント発生時のビジネスリスクが特に高い業界の企業

XDR・EDR・MDRの比較と選び方のポイント

XDRとEDRの根本的な違いを整理

EDRとXDRの最も根本的な違いは、分析対象とするデータの「範囲」です。

  • EDR
    PCやサーバーといった「エンドポイント」の活動データ(プロセスの実行、ファイルアクセス、ネットワーク接続など)に特化して監視・分析を行います。エンドポイント上で発生した脅威を早期に検知し、封じ込めることに強みを発揮します。
  • XDR
    EDRの監視対象であるエンドポイントに加え、ネットワーク、クラウド、メール、ID情報など、より広範なソースからデータを収集し、横断的に分析します。これにより、攻撃の全経路や多層的な活動を可視化し、エンドポイント単体では捉えきれない脅威にも対応できます。

比較表(対象範囲・運用主体・メリット/デメリット)

EDR、XDR、MDRの特徴を以下の表にまとめます。

特徴

EDR

XDR

MDR

対象範囲

エンドポイント

エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メールなど複数レイヤー

顧客環境全体(サービス内容により異なる)

運用主体

導入企業

導入企業

外部の専門ベンダー

メリット

- エンドポイントの可視化向上
- 脅威の早期検知・封じ込め
- インシデント対応の迅速化

- 広範囲な脅威の可視化と相関分析
- 複数レイヤーでの攻撃全体像把握

-高度な脅威ハンティング機能
- インシデント対応の効率化

- 専門家による24/365運用
- セキュリティ人材不足の解消
- アラート対応負荷の大幅な軽減
- 高度な脅威分析と迅速な対応
-インシデント発生時の被害最小化

デメリット

-専門知識と運用リソースが必要
- アラート過多の可能性
- 常時監視体制が困難

- 導入・連携の複雑さ、高度な技術力を要する
- 高度なスキルセットを持つ人材が必要
- 膨大なデータ量によるコスト増の可能性
- 最終的なアラート対応負荷は残存

- サービス利用コストが発生
- ベンダーへの依存度が高まる
- 自社での知見蓄積が限定的になる可能性

関連記事:【初心者向け】MDR・EDR・XDRの違いと使い分けのポイント

自社の状況に合わせたソリューション選定のポイント

自社にとって最適なセキュリティソリューションを選定するためには、セキュリティ体制の成熟度、抱えている課題、そして利用可能なリソース(予算、人材など)を評価することが重要です。

  1. エンドポイント対策から始めたい、あるいはエンドポイント対策を強化したい場合
    EDRが第一歩となります。エンドポイントの可視性を高め、マルウェアや不正な活動を検知・対処する基盤を構築できます。
  2. 複数のセキュリティ製品を導入済みで、それらを連携させ、より高度な分析と攻撃の全体像把握を目指す企業
    XDRの導入を検討すべきでしょう。バラバラに管理されているセキュリティ情報を統合し、相関分析することで、より複雑な脅威にも対応できる体制を構築できます
  3. EDRやXDRの導入を検討しているが、運用に関する専門知識や人材、24時間監視体制の構築に課題を感じている場合
    MDRサービスの活用が最適な選択肢となります。外部の専門家に運用をアウトソースすることで、自社リソースの制約を受けずに、高レベルなセキュリティ運用を実現できます。

まとめ:自社に合った一歩先の対策を見極める

本記事では、サイバー攻撃の複雑化・巧妙化が進む現代において、その全体像を可視化し、効果的な対策を講じるための次世代セキュリティソリューションであるXDRについて、その基本的概要から機能、メリット、運用課題、そしてEDRやMDRといった関連ソリューションとの違いまでを詳しく解説しました。

XDRは、複雑化するサイバー攻撃の全体像を捉えるための強力なアプローチですが、その効果を最大限に引き出すには高度な運用が不可欠です。

EDRによるエンドポイント防御の強化、XDRによる複数レイヤーにわたる脅威の可視化と相関分析、そしてMDRによる24時間365日の専門家による運用アウトソーシング。これらの選択肢の中から、自社の現在の課題と将来のビジョンに最も合った「一歩先」の対策を見極めることが、変化し続けるサイバー脅威から組織を守り、持続可能なセキュリティ体制を構築する上で何よりも重要です。貴社のセキュリティ強化に向けて、どのような選択肢が最適か、ぜひご検討ください。

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