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【内部不正】なぜ防ぎにくい?「身内」によるデータ持ち出しの手口と防衛策

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【内部不正】なぜ防ぎにくい?「身内」によるデータ持ち出しの手口と防衛策
外部からの攻撃(サイバー攻撃)が高度化・巧妙化する一方で、組織内部の人による「内部不正」は、企業にとって同等、あるいはそれ以上に深刻なダメージをもたらす脅威です。本記事では、内部不正が起きるメカニズムと代表的な発生シナリオ、そして社員や企業を守るための防衛策をわかりやすく解説します。


「内部不正」が企業に与える致命的なダメージ

外部からのサイバー攻撃に比べ、内部不正はなぜ企業にとって致命的なダメージとなりやすいのでしょうか。その理由は、攻撃の性質と心理的な盲点にあります。

サイバー攻撃よりも発見が遅れやすい理由

内部不正は、ランサムウェアのように画面がロックされたり、脅迫状が表示されたりするわけではありません。社員が業務の延長に見える形で不正を行うため、競合他社への情報流出や、ネット上での暴露が起きるまで、長期間発覚しないケースがほとんどです。

正規の権限を使われるため、セキュリティソフトをすり抜けやすい

外部からの不正アクセスを防ぐ強固なセキュリティ体制であっても、社内の人間が「正規のIDとパスワード」を使ってシステムにログインすれば、正しい利用として扱われ、一般的なセキュリティソフトだけでは防ぎきれません。

被害の立証・責任追及が難しく、企業ブランドへの影響も大きい

いざ不正が発覚しても、「業務上必要だった」「私的利用の意図はなかった」と主張されれば、悪意を立証するのは困難です。また、「自社の社員に裏切られた」「社員の管理すらできていない」という事実は、企業のブランドイメージや顧客からの信頼を大きく失墜させます。

「うちの社員に限って…」という性善説が最大の脆弱性に

「社内には不正を行うような社員はいない」という思い込みこそが、監視の目を緩ませる最大の原因です。IPA(情報処理推進機構)が発表する「情報セキュリティ10大脅威」によると、内部不正は2016年から11年連続でトップ10入りをしています。このように、内部不正は「運が悪かった」で済む問題ではなく、どのような企業でも発生しうる経営リスクです。

順位

「組織」向け脅威

初選出年

10大脅威での取り扱い(2016年以降)

1

ランサム攻撃による被害

2016年

11年連続11回目

2

サプライチェーンや委託先を狙った攻撃

2019年

8年連続8回目

3

AIの利用をめぐるサイバーリスク

2026年

初選出

4

システムの脆弱性を突いた攻撃

2016年

6年連続9回目

5

機密情報等を狙った標的型攻撃

2016年

11年連続11回目

6

地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)

2025年

2年連続2回目

7

内部不正による情報漏えい等

2016年

11年連続11回目

8

リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃

2021年

6年連続6回目

9

DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)

2016年

2年連続7回目

10

ビジネスメール詐欺

2018年

9年連続9回目

出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026 [組織]」を基に作成
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html

内部不正が起きる2つの構図

【意図的な持ち出し】不正行動を引き起こす3つの要素

米国の犯罪学者が提唱した「不正のトライアングル」によれば、人は以下の3つの要素が揃った時、魔が差して不正を働いてしまいます。

  • 動機: 給与や待遇への強い不満、個人的な借金、過酷なノルマによる重圧
  • 機会: ずさんなアクセス管理、テレワークにおける監視低下
  • 正当化:「会社に貢献した自分のデータだ」「ちょっと借りるだけ」という思い込み

【無自覚な情報漏えい】利便性や効率化を優先したルール違反

悪意は全くなく、むしろ「業務効率化のため」「会社のため」と思って行った行動が、重大な情報漏えいに繋がるケースです。本人に”悪意がない”ため、リスクを自覚しにくいのが特徴です。

  • 業務効率化の罠: 未承認の生成AIや翻訳・要約ツールに機密データを入力
  • 持ち帰り残業の常態化: 個人のクラウドストレージやUSBメモリにデータを送る
  • ヒューマンエラー:メールの宛先設定間違いや、公共の場でのPC画面の覗き見に対する意識の低さ

企業を揺るがす「内部不正」の代表的な4つのシナリオ

実際のビジネスの現場では、どのような形で内部不正が発生するのでしょうか。多くの場合、複数の要因が重なってインシデントへと発展します。

シナリオ

主な実行者

動機・原因

持ち出しの手法

①退職・転職時の持ち出し

退職予定者

転職先での評価向上、独立準備

個人用USBやクラウドへのデータコピー

②特権IDの悪用

システム管理者

会社への強い不満、金銭目的

特権アクセスによる大量窃取とログ改ざん

③シャドーIT・AI悪用

一般社員

業務効率化(無自覚な漏えい)

未承認の生成AI等への機密データ入力

④退職後の不正アクセス

退職者

システム管理者のアカウント削除漏れ・遅れの怠慢(管理ミス)

残留アカウントを使った自宅からのログイン

シナリオ①:【退職・転職時】競合他社への顧客リストや技術データの持ち出し

最も典型的なシナリオです。退職予定者が、転職先での評価向上や、独立準備のために、自分が担当していた顧客リストや製品データを持ち出すケースです。

シナリオ②:【特権IDの悪用】システム管理者によるデータの改ざん・窃取

システム全体にアクセスできる「特権ID」を持つ管理者が、強い不満や金銭目的から、社内の機密データを抜き出したり、自身の操作ログを改ざん・消去したりするケースです。

シナリオ③:【シャドーIT・AI悪用】未承認の生成AIへの機密データ入力

業務効率化のために、社外秘の会議録や顧客データを生成AIで処理させるケースです。入力されたデータがAIの学習データとして吸収され、意図せず他社の検索結果に表示されてしまうリスクがあります。

シナリオ④:【退職後】消し忘れたアカウントからの不正アクセス

退職した社員のIDやパスワードをシステム管理者が無効化せず、「残留アカウント」として放置されているケースです。退職者が後日、自宅から会社のVPNやクラウドシステムにログインし、情報を抜き取ります。

 内部不正の兆候と早期発見のポイント

内部不正は突然起きるわけではなく、直前になんらかの兆候が現れることが少なくありません。ただし、単独の兆候だけで「あの人が犯人だ」と断定するのではなく、システム上の記録と行動の変化を複合的に判断することが重要です。

兆候の分類

具体的なサイン・行動

背景にあるリスク・意図

①時間外の大量通信

深夜・休日の大量データダウンロード

人目を避けた、データの持ち出し準備

②不自然なアクセス

担当外の機密ファイルへの頻繁な接触

持ち出し可能な価値ある情報の物色

③退職前の外部通信

急な退職申し出とUSB・クラウド利用

転職・独立に向けた機密データの流出

④日常の行動の変化

勤怠の乱れ、孤立、不満の吐露

不正を引き起こす「動機」や「正当化」の増大

兆候①:業務時間外(深夜・休日)の大量のデータダウンロード

データの持ち出しを行う際、人目を避けるために深夜や休日にシステムへアクセスする傾向があります。通常の業務フローではあり得ない時間帯に大量のデータ通信が発生した場合は、強い警戒が必要です。

兆候②:担当外の機密ファイルへの頻繁なアクセス

自身の担当外のプロジェクトデータや、権限を越えた機密情報に対して、不自然なアクセスを繰り返す行動です。不正の実行者が「どの情報が高く売れるか」「何を持ち出せるか」を物色している可能性があります。

兆候③:急な退職の申し出と、直前のUSBメモリ使用やクラウドストレージへの通信

転職や独立を控えたタイミングは、最も内部不正が発生しやすい危険な期間です。急な退職の申し出があった直前・直後に、会社の資産であるデータを外部へ逃がそうとするシステム上の動きがないか確認することが不可欠です。

兆候④:勤怠の乱れや、社内での孤立・不満の吐露

システム上のログだけでなく、日常の「行動や態度の変化」も重要なサインとなります。会社への不満や借金などの個人的なプレッシャーが、不正のトライアングルにおける「動機」や「正当化」を引き起こす引き金となります。

「社員を疑う」のではなく「守る」ための4つの根本対策

内部不正対策の本質は、社員を疑って縛り付けることではなく、大切な社員を犯罪者にしないための仕組みづくりです。

対策の柱

具体的なアクション

①ゼロトラスト

役職や業務に応じた「アクセス権限の最小化(PoLP)」の徹底

②監視と記録

アクセスログの取得とEDRによる不審な振る舞い検知

③物理・論理的制限

DLP等によるUSB利用制限やクラウドアップロードの制御

④組織風土

退職時のアカウント即時停止と、不満を溜めない職場づくり

対策①:【ゼロトラスト】「社内=安全」を捨て、アクセス権限を最小化

「Verify, Never Trust(決して信頼せず、必ず確認せよ)」というゼロトラストに基づき、役職や担当業務に合わせて、必要最小限のデータにしかアクセスできないように権限を絞り込みます。(PoLP:最小権限の原則)

対策②:【監視と記録】アクセスログの取得と、EDRによる「不審な振る舞い」の早期検知

「誰が・いつ・何をしたか」のログを確実に残していることを社内に明示することで、強い抑止力を生み出します。さらに、EDRを導入して「深夜の大量ファイル操作」といった異常な振る舞いをシステムで自動検知します。

関連記事:今さら聞けない「EDR」とは?基本的な役割と導入後の運用課題をわかりやすく解説

対策③:【物理・論理的制限】USBメモリ等の使用禁止と、クラウドサービスへのアップロード制御

ルールで禁止するだけでなく、システム的に「できない」環境を作ります。個人用USBメモリの接続を無効化し、DLPツールを用いて、機密情報が含まれるファイルの外部送信や、未承認クラウドへのアップロードを強制的にブロックします。

対策④:【組織風土】退職時のアカウント即時停止ルールの徹底と、風通しの良い職場づくり

退職者のアカウントは「退職日の業務終了と同時に必ず無効化する」という運用フローを徹底します。また、不正の「動機」を減らすため、人事評価の透明性を高め、不満を溜め込ませない評価・相談体制など風通しの良い職場環境を構築することが土台となります。

まとめ:システムによる「抑止力」が、大切な従業員を守る

内部不正は、「誰でも起こしうる構造的リスク」です。そのため、社員を疑う文化を作るのではなく、仕組みで防ぎ・守る文化を作ることが重要です。適切なアクセス権限と監視の目は、企業の機密情報だけでなく、そこで働く大切な従業員の未来をも守る最強の盾となるのです。

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