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【EPPとは】従来型アンチウイルスでは防げない理由と未知の脅威を防ぐ仕組みを徹底解説

セキュリティマガジン

【EPPとは】従来型アンチウイルスでは防げない理由と未知の脅威を防ぐ仕組みを徹底解説
テレワークやクラウドの普及により、企業の防御ラインは「ネットワーク境界」から「エンドポイント(PC)」へ移行しました。「ウイルス対策ソフトを入れているから安心」という認識は過去のものであり、現代の高度な攻撃を防ぐには不十分です。本記事では、エンドポイント保護の要である「EPP」について、従来型との違い、未知の脅威を防ぐ仕組み、そして導入によるビジネスメリットを解説します。

EPP(Endpoint Protection Platform)とは? アンチウイルスとの違いと役割を解説 

EPPは、企業のエンドポイントを守る「予防ファースト」のセキュリティ基盤です。従来型アンチウイルスとの最大の違いは、未知の脅威やファイルレス攻撃にも対応できる点にあります。

定義と役割 

EPP(Endpoint Protection Platform)とは、マルウェアの感染を「未然に防ぐ(Prevention)」ことに特化した統合プラットフォームです。 その最大の役割は、脅威が端末内部で実行される前、あるいは実行された直後の段階で即座に検知・遮断し、実害の発生を阻止することにあります。 


水際対策の強化

泥棒に例えるなら、「家の中に侵入されてから捕まえる」のではなく、「強固な鍵と窓ガラスで侵入そのものを諦めさせる」役割を担います。

インシデント回避

侵入を許してしまうと発生する「事後対応(調査・復旧)」という莫大なコストと業務負荷を、未然に防ぐことで回避します。

現代における重要性

かつてはファイアウォールなどの「境界防御」が主流でしたが、クラウド利用やテレワークの普及により、PCは社外(自宅やカフェ)で使われることが当たり前になりました。これは、社内ネットワークという守られた城壁の外で、インターネットに接続されていることを意味します。

エンドポイント自体がサイバー攻撃の最前線となった今、端末単体で攻撃を自己完結的に防御できるEPPの重要性はかつてないほど高まっています。

比較項目

従来型アンチウイルス

EPP (NGAV含む次世代型)

主な技術

パターンマッチング

AI・機械学習 / 振る舞い検知

防御対象

既知のマルウェアのみ

未知のマルウェア / ファイルレス攻撃

防御時期

定義ファイル更新後

リアルタイム(実行前・実行時)

オフライン時

脆弱な場合あり

強固(ローカルAI判定)

なぜ「従来型アンチウイルス」は限界なのか?

従来型アンチウイルス(レガシーAV)が現代の攻撃を防げない理由は、その検知方式にあります。

シグネチャ型(パターンマッチング)の弱点

従来型AVの基本は「シグネチャ型(パターンマッチング)」です。これは、既知のウイルスの特徴(ハッシュ値など)を「指名手配リスト」としてデータベース化し、ファイルと照合する方式です。しかし、この仕組みには致命的な欠点があります。

  • 新種の爆発的増加

    攻撃者は毎日数十万個もの「新種・亜種」のマルウェアを作成しています。これら全てをリスト化して配布することは物理的に不可能です。

  • ポリモーフィック型への敗北

    自身のコードを毎回書き換えてハッシュ値を変更する「ポリモーフィック型マルウェア」に対しては、固定のリスト照合は全く機能しません。

  • タイムラグの問題
    新種が発見されてから定義ファイルが作成・配信されるまでの数時間〜数日間は、完全に無防備な状態(ゼロデイ期間)となります。

ファイルレス攻撃やゼロデイ攻撃への無力さ

近年増加しているのが、ウイルスファイルを端末に保存せず、メモリ上だけで不正コードを実行する「ファイルレス攻撃」です。PowerShellなどの正規ツールを悪用するため、ファイルスキャンを前提とする従来型AVでは検知することさえ困難です。

また、OSやソフトの脆弱性が発見され、修正パッチが配布される前の隙を突く「ゼロデイ攻撃」に対しても、既知のパターンを持たない従来型では防御の手立てがありません。

EPPを支える主要技術と機能

EPPは「NGAV(次世代アンチウイルス)」技術を搭載し、多層防御を実現します。未知の脅威を遮断する4つの主要技術を解説します。

①静的解析(静的ヒューリスティック / AI・機械学習)

ファイルを実行する「前」に、AIがコードの特徴を分析します。

  • 仕組み: 数億の検体を学習したAIが、悪意ある特徴を確率的に判定。
  • 効果: シグネチャにない「未知のマルウェア」でも実行前にブロック可能。

②動的解析(振る舞い検知 / Behavior Analysis)

ファイルが実行された「後」の挙動を監視します。

  • 検知対象: 「勝手に暗号化する」「不正な通信を行う」などの不審な動き。
  • 効果: 静的解析をすり抜けた脅威や、ファイルレス攻撃をリアルタイムで強制停止。

脆弱性エクスプロイト防御

OSやアプリの「脆弱性」を突く攻撃そのものを防ぎます。

  • 機能: 脆弱性を悪用するメモリ操作や通信を監視・遮断。
  • 効果: パッチ未適用の状態でも攻撃を防ぐ「仮想パッチ」の役割を果たす。

④アプリケーション制御・デバイス制御

感染経路や実行環境を物理的に制御します。

  • アプリ制御: 許可されたアプリ以外の起動を禁止(ホワイトリスト)。
  • デバイス制御: USBメモリ等の接続を制限し、外部からの持ち込みや情報持ち出しを防止。

EPP導入がもたらすビジネスメリット

EPP導入は単なるツール更新ではなく、経営リスクを低減する投資です。具体的なビジネスメリットを解説します。

事後対応コストの削減

警察庁の発表によると、ランサムウェア被害の復旧には1ヶ月以上もかかるケースが半数近くを占めます。EPPで水際防御を実現すればこうした高額な復旧コストを回避できます。

出典:警察庁「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(2024年9月19日)」を基に作成
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R6kami/R06_kami_cyber_jousei.pdf

管理運用の効率化(クラウドネイティブ)

最新のEPPはクラウド管理が主流で、以下のメリットがあります。。

  • サーバーレス: 社内に管理サーバーを構築・維持する手間が不要。
  • 一元管理: 在宅勤務や出張中のPCも、Webコンソールからリアルタイムで管理可能。

PCパフォーマンスの維持

AIを活用したEPPは、スキャン処理が軽量であり、定義ファイルの頻繁な更新も不要なため、PCのリソース消費を最小限に抑えられます。従業員はセキュリティソフトの存在を意識することなく、快適に業務に集中できます。

コンプライアンス対応(個人情報保護法・GDPR)

改正個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)などの法規制では、個人データを守るために「技術的に適切な措置」を講じることが求められます。

最新の脅威に対応できるEPPを導入していることは、法的責任を果たす上での証明となり、万が一の際の説明責任(アカウンタビリティ)を果たす助けとなります。

サイバー保険料の低減

一部のサイバー保険では、特定のEPP製品を導入している、あるいはEDR等の高度な対策を行っている企業に対して、保険料の割引を適用するケースが増えています。リスクが低いとみなされるためです。MDRサービスの主な価格体系は、以下の2種類に分けられます。どちらの体系が自社に適しているか、サービスの想定利用頻度や年間の予算計画などを基に慎重に検討することが重要です。

自社に最適なEPP製品を選ぶポイント

多種多様な製品の中から、自社に最適なものを選ぶための4つの基準を紹介します。

検知精度と誤検知(過検知)のバランス

最も重要なのは「業務を止めない」ことです。検知率が高いことは重要ですが、業務に必要な自社開発アプリやマクロまでマルウェアとしてブロックしてしまう「誤検知(過検知)」が多いと、業務が停止し、情シスへの問い合わせが殺到します。導入前には必ずPoC(概念実証)を行い、自社の業務アプリとの相性を確認することが不可欠です。

防御範囲の広さ

管理コストを下げるため、単一コンソールで全端末を守れる製品を選びます。

  • 対応OS: Windows, Mac, Linux。
  • モバイル: Android, iOSなどのスマートデバイス。

オフライン時の防御能力

インターネット未接続時でも防御力が落ちないかが重要です。クラウド上のAIに問い合わせないと検知できない製品ではなく、エージェント(端末)側にも軽量なAIモデルを搭載し、オフラインでも未知の脅威を判定できる製品を選ぶのがベストプラクティスです。

SOCやXDRとの連携性

将来的にEDR(事後対処)機能を追加したり、ID管理やネットワーク製品と連携させるXDR(Extended Detection and Response)へと発展させたりする可能性がある場合、拡張性の高いプラットフォーム型の製品を選んでおくことが推奨されます。

選定ポイント

チェック内容

重要度

検知ロジック

AI/機械学習、振る舞い検知など多層防御になっているか

★★★

誤検知率

業務アプリを誤って止めた際の除外設定は容易か

★★★

動作の軽さ

業務中のPC動作に影響を与えないか(メモリ・CPU使用率)

★★☆

対応OS

Windows, Mac, Linux, Mobileを網羅しているか

★★☆

拡張性

EDR機能の追加や、MDRサービスのオプションがあるか

★★☆

まとめ:セキュリティ運用は「事後対処」から「予防ファースト」へ

高度化する攻撃に対し「侵入前提」の対策は重要ですが、それは「防御」を軽視して良い理由にはなりません。EPPで99%の脅威を未然に防いでこそ、残りの1%への高度な対処が機能します。AI検知への刷新で防御力を高め、莫大な事後対応コストを回避する。「予防ファースト」へのシフトこそが、ビジネスを安全に継続させる最短ルートです。

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