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NDRとは?EDR・XDRとの違いや導入メリットデメリットをわかりやすく解説

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NDRとは?EDR・XDRとの違いや導入メリットデメリットをわかりやすく解説
サイバー攻撃が巧妙化する昨今、従来の防御策だけでは企業の情報資産を守ることが困難になってきました。そこで注目されているのが、ネットワーク全体の通信を常時監視し、脅威を検知・対応する「NDR(Network Detection and Response)」です。本記事では、NDRの基本的な仕組みからEDR・XDRとの違い、導入メリットと課題、そして運用の最適化方法までをわかりやすく解説します。

NDRの基本と重要性

NDR(Network Detection and Response)とは?

NDRとは、ネットワークトラフィック全体をリアルタイムで監視・分析し、社内ネットワークに侵入した脅威を早期に発見するためのソリューションです。従来の境界型防御では見逃されがちな内部拡散や不正通信を検知でき、企業のセキュリティ体制における「高機能な監視カメラ」の役割を担います。主な特徴は以下の通りです。

  • 監視範囲
    ネットワーク全体を俯瞰的に監視します。
  • 対象デバイス
    PCやサーバーに加え、エージェントを導入できないIoT機器やOT(工場などの制御系)デバイスも監視対象に含みます。
  • 検知対象
    ファイアウォールを突破した後のマルウェアの内部拡散(ラテラルムーブメント)や不正な外部通信などを検知します。

NDRに活用される技術

NDRは、高度な脅威検知を実現するために、以下のような先進技術を活用しています。

  • AI/機械学習(ML)
    平常時の通信状態を学習し、そこから外れる「異常な振る舞い」を自動で検知します。
  • 行動分析:
    通信のパターンや順序を分析し、攻撃者特有の行動を見つけ出します。
  • 脅威インテリジェンス:
    世界中の攻撃情報と照合し、既知の脅威に迅速に対応します。

なぜ今、NDRが重要視されるのか

近年、NDRの重要性が高まっている背景には、ランサムウェア被害の深刻化が挙げられます。警察庁の発表によると、2024年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は114 件と高水準で推移しており、従来の対策では検知が難しい高度な攻撃への対応が急務となっています。また、「社内外問わず、全ての通信を信頼しない」というゼロトラストモデルの普及により、ネットワーク内部の通信を常に監視・検証するNDRは、その実現に不可欠な基盤技術として位置づけられています。

出典:警察庁「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(2024年9月19日)」を基に作成 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R6kami/R06_kami_cyber_jousei.pdf

【比較表】NDRとEDR、XDRの違い

NDRを検討する際、比較対象となるのがEDRとXDRです。これらは監視対象や得意分野が異なり、それぞれが補完関係にあります。各ソリューションの違いを理解し、自社の課題に合った組み合わせを検討することが、効果的な多層防御の実現に繋がります。

監視対象と検知できる脅威の違い

NDR、EDR、XDRの最も根本的な違いは「どこを監視しているか」という点にあります。NDRはネットワークという「情報の通り道」全体を監視し、EDRはPCやサーバーといった個々の「端末」の内部動作を監視します。XDRは、それら複数の領域を横断的に監視・分析し、攻撃の全体像を捉えるアプローチです。

比較項目

NDR

EDR

XDR

監視対象

ネットワークトラフィック全体

PC、サーバー等のエンドポイント

- ネットワーク
- エンドポイント
- クラウド
- メール
など複数領域

検知できる脅威

- 内部での横展開
- C&Cサーバーとの通信
- IoT/OT機器への攻撃

- マルウェア感染
- 不正なプロセス実行
- ファイルレス攻撃

複数ログを横断的に分析し、高度な攻撃シナリオを検知

検知精度・対応スピード・導入コストの比較

各ソリューションは、その特性から検知精度や対応スピード、コスト感も異なります。一つの指標だけで優劣は決められず、自社の環境やセキュリティ体制、予算に応じて総合的に評価することが重要です。

比較項目

NDR

EDR

XDR

検知精度

振る舞い検知に優れる

不正プロセスの検知精度が高い

相関分析により最も高精度

対応スピード

影響範囲の特定が早い

端末単位の対応が迅速

自動化により最速

導入コスト

中〜高

最も高価

相互補完で実現する多層防御

NDRとEDRは競合する製品ではなく、組み合わせることで互いの弱点を補完し、より強固な防御体制を構築できます。例えば、インシデント発生時には以下のようなシームレスな連携が可能です。

  • NDRが検知: ネットワーク上で不審な通信(マルウェアの拡散活動など)を発見。
  • EDRが特定: その通信を行っている具体的な端末を特定。
  • EDRが対応: 該当端末をネットワークから自動的に隔離し、被害拡大を防止。

NDR導入のメリット

NDRの導入は、これまで見えなかったネットワーク内部のリスクを可視化し、インシデントへの対応能力を飛躍的に向上させます。これにより、事業継続性を高め、企業の信頼を守ることに直結する、戦略的な投資と言うことができます。

メリット

概要

未知の脅威を検知

AIの振る舞い分析により、未知のマルウェアやゼロデイ攻撃も検知可能

迅速なインシデント対応

攻撃の全体像を可視化し、原因究明や復旧時間を短縮。

ネットワークの完全な可視化

シャドーITの発見などITインフラ管理の効率化にも貢献

ゼロトラストの実現を強化

ネットワーク内部の通信を常時監視し、「全てを検証する」体制を構築可能

NDR導入のデメリットと課題

NDRは強力なツールですが、導入すれば全てが解決するわけではありません。その性能を最大限に引き出すには、専門的な知識と運用体制が不可欠です。特に、日々発生する大量のアラートへの対応と、それを担う人材の確保が、多くの企業にとって導入の障壁となっています。

デメリット・課題

概要

運用負荷の増大

大量のアラートが発生するため、真の脅威を見極める分析作業が担当者の大きな負担となります。

専門人材の不足

高度な分析やインシデント対応ができるセキュリティ人材は市場全体で不足しており、確保が困難です。

誤検知による対応コスト

正常な通信を脅威と誤検知する可能性があり、その確認作業にコストと時間がかかります。

暗号化通信への対応

通信の多くが暗号化されており、内容を分析するためには復号する仕組みが別途必要になる場合があります。

実際に、JIPDEC(一般財団法人 日本情報経済社会推進協会)の「企業IT利活用動向調査2025」によると、NDR/UEBAの導入率は21.4%に留まっています 。これは、マルウェア対策ツール(59.7%)やファイアウォール(57.8%)といった他の基本的なセキュリティ対策ツールと比較して低い水準です。このことからも、NDRの有用性が認識されている一方で運用面の課題が導入のハードルとなっていることを示唆しています。

出典:JIPDEC(一般財団法人 日本情報経済社会推進協会)「企業IT利活用動向調査2025」を基に作成 https://www.jipdec.or.jp/library/report/o66i7e00000015pm-att/20250314_s01.pdf

課題解決の鍵「MDRサービス」とは?

MDRとは?NDRとの違いと連携イメージ

MDR(Managed Detection and Response)とは、セキュリティの専門家が24時間365日体制でNDRなどのツールを監視・運用してくれるアウトソーシングサービスです。

NDRとMDRの関係は、「高度な監視カメラ(NDR)」と「警備員(MDR)」に例えられます。MDRサービスは、ツール(NDR)が出すアラートを専門家が分析し、本当に対応が必要な事態だけを通知することで企業の運用負荷を大幅に軽減します。

NDRの運用を専門家チームにアウトソース

MDRサービスを活用することで、以下のような業務を専門家に委託できます。

  • 24時間365日体制での常時監視
  • 大量のアラートの重要度判断(トリアージ)
  • インシデント発生時の初期調査と分析

人材不足の解消とセキュリティ運用の高度化を両立

MDRサービスの導入により、以下のような効果が期待できます。

  • 人材不足の解消: 採用・育成が困難なセキュリティ専門家を自社で抱える必要がなくなります。
  • セキュリティ運用の高度化:プロフェッショナルによる高度な監視体制を迅速に構築できます。
  • コア業務への集中: 情報システム部門が大量のアラート対応から解放され、本来の戦略的業務にリソースを集中できます。

まとめ:実践的なサイバーセキュリティ体制の構築へ

本記事では、ネットワークセキュリティの要となるNDRについて、その仕組みから導入のメリット・デメリットまでを網羅的に解説しました。境界防御をすり抜ける巧妙なサイバー攻撃を検知するために、NDRはEDRなどと連携する「多層防御」の実現に不可欠な要素です。

しかし、その導入と運用には高度な専門知識が求められるため、自社の状況に応じて、MDRサービスの活用も含めた最適な運用方法を検討することが重要です。実践的なサイバーセキュリティ体制の構築に向けてMDRの導入を戦略的に進めていきましょう。

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