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【MDRとは?】MSS、SOCとの違いや導入メリット、効果的な組み合わせなどを解説

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【MDRとは?】MSS、SOCとの違いや導入メリット、効果的な組み合わせなどを解説
近年、サイバー攻撃はますます高度化し、企業にとってセキュリティ対策は経営の最重要課題です。しかし、セキュリティ人材の不足やノウハウの欠如は深刻な問題です。
本記事では、この課題解決の鍵となるMDRの基本からメリット・デメリット、選び方、他ソリューションとの違いまで、企業の担当者や経営層が知りたい情報を網羅的に解説します。
MDRとは何かを深く理解し、自社のセキュリティ強化に繋げましょう。

MDRの基本と重要性:なぜ今注目されるのか?

サイバーセキュリティの脅威が増大する中、新たな防御策としてMDRサービスが注目されています。
本章では、MDRの基本的な定義と、国内外でその必要性が高まっている背景を、最新の脅威動向や導入傾向を交え解説します。

MDR(Managed Detection and Response)とは?

MDRとは、セキュリティ専門家チームが企業のIT環境から収集されるさまざまなログを24時間365日体制で監視・分析し、脅威をリアルタイムに検知・対処するマネージド型セキュリティサービスです。

脅威検知からインシデント対応支援までを包括的に提供し、企業のセキュリティ運用を強化します。高度な専門知識を有する事業者へ運用を外部委託できるため、リソースが限られる企業に有効です。

MDRが必要とされる背景:サイバー攻撃の進化と企業リスク

サイバー攻撃は巧妙化・甚大化し、従来の対策では未知の脅威を防ぎきれません。総務省「情報通信白書令和6年版」によればサイバー攻撃のトラフィックも増加傾向で、2023年は過去最高の観測数を記録しています。

そのため、侵入を前提とした迅速な検知と適切な対処、つまり「事後対応(レスポンス)」の強化が不可欠です。これが高度な検知・対応能力を持つMDRの必要性が高まる理由です。

出典:総務省「情報通信白書令和6年版」を基に作成 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/n21a0000.pdf

国内の導入傾向

このようにサイバー攻撃の脅威は高まる一方ですが、MDRサービスの導入状況を見ると、低い水準にあることがわかります。多くの企業がセキュリティ対策の必要性を認識しつつも、MDRのような高度なセキュリティサービスの導入には至っていない現状を示唆していると言えるでしょう。

出典:自社(NTTセキュリティ・ジャパン)調べ

MDRとSOC・EDR・MSSとの違いを徹底比較

セキュリティ分野では、MDR、SOC、EDR、MSSといった用語がしばしば登場しますが、それぞれの役割や機能には重なりがあり、明確な線引きが難しいこともあります。ここでは、それらの違いを整理し、MDRサービスの位置付けをわかりやすく解説します。

MDRとSOC(Security Operation Center)の違い

SOCは企業や組織内に設置されるセキュリティ監視・分析・対応の専門チームです。対してMDRは、これらのSOC機能(監視・検知・対応)をマネージドサービスとして、外部専門ベンダーが提供する形態です。

自社でSOCを構築・維持するには高いコストと専門人材が必要ですが、MDRを活用すれば迅速に高度な監視・対応体制を整えることができます。
MDRは「アウトソース型SOC」とも表現されることがありますが、脅威ハンティングや自動対応など、より高度な機能を含む点で進化したサービスとも言えます。

関連記事:【徹底比較】MDRとSOCの違いとは?自社に最適な選び方を解説

MDRとEDR(Endpoint Detection and Response)の違い

EDRはPCやサーバーなどのエンドポイントでの脅威を検知・分析・対応するためのソフトウェア製品・ツールです。MDRサービスは、このEDRを含む複数のセキュリティツールを活用し、外部のセキュリティ専門家が運用(監視、分析、対応)を行うマネージドサービスです。

EDRを導入しても運用人材がいなければ、その効果は限定的ですが、MDRを活用することでEDRの機能を最大限に引き出し、迅速かつ高度な対応体制を構築できます。

関連記事:【初心者向け】MDR・EDR・XDRの違いと使い分けのポイント

MDRとMSS(Managed Security Service)の違い

MSSはファイアウォールやIDS/IPSなどのセキュリティ機器の運用・監視を外部に委託する包括的なセキュリティ運用サービスです。

従来のMSSは機器ログ監視や脆弱性管理が中心で、対応は主に通知やエスカレーションにとどまることが一般的でした。
一方、MDRは「脅威の検知(Detection)」と「対応(Response)」に特化したサービスであり、リアルタイムな監視、脅威ハンティング、インシデント対応など、より能動的かつ高度なセキュリティ運用を提供します。

関連記事:【5分でわかる】MDRとMSSの違いとは?自社に最適なセキュリティサービスの選び方

比較項目

MDR

SOC

EDR

MSS

運用主体

外部専門ベンダー

自社(または外部委託もあり)

自社(ツール導入)

外部専門ベンダー

主要目的

脅威の検知・分析、迅速なインシデント対応・復旧支援

セキュリティ監視・分析、インシデント対応

エンドポイントでの脅威検知・対応支援

セキュリティ機器の運用管理、ログ監視、脆弱性管理など

焦点

能動的な脅威検知と対応(Detection & Response)

アラート監視と初動対応(ハンドリング)

エンドポイント保護と調査効率化

インフラ安定稼働、受動的な監視

MDRはどんな企業に向いているか

MDRサービスは多くの企業で有効ですが、特に以下のような課題や業界特性を持つ企業において、導入効果が高くなります。本章では、どのような課題を持つ企業がMDR導入を検討すべきか、具体的なケースを解説します。

インシデント対応体制に課題を抱える企業

以下のような課題を持つ企業にMDRは有効です。

  • インシデント発生時の対応フローが未整備。
  • 対応可能な専門知識を持つ人材が社内に不在。
  • 24時間365日の監視体制を自社で構築するのが困難。

IT人材が不足している企業

特に中堅・中小企業において、IT担当者がセキュリティ業務を兼務しているケースが多く、日々高度化するサイバー攻撃の情報を収集し、最新の対策を講じ続けることは困難です。

セキュリティ分野に精通した人材の採用や育成には時間とコストがかかるため、外部の専門家によるMDRサービスを活用することで、限られたリソースでも高度なセキュリティ体制を実現できます。

規制対応やインシデントリスクが高い業界(金融・医療・製造など)

以下のような業界では、情報の機密性や可用性が重要でありMDRのような高度なセキュリティ対策が求められます。

  • 金融・医療業界:取り扱う情報の機密性が高く、インシデント発生時の影響が甚大
  • 製造業:工場制御システム(OT)を狙ったサイバー攻撃も増加しており、事業継続に深刻な打撃を与えるリスクあり

MDR導入による実践的なメリット:企業にもたらす価値とは

MDRサービスの導入は、単なるセキュリティ製品の導入にとどまらず、企業のセキュリティ体制全体に大きな価値をもたらします。脅威の早期発見や迅速な対応はもちろんのこと、セキュリティ運用負荷の軽減やコスト最適化にも繋がる可能性があります。

ここでは、MDRが企業にもたらす具体的な価値を、代表的な4つの観点から整理します。

No.

メリット

主な価値・効果

1

24時間365日の脅威監視と迅速なインシデント対応

- 夜間や休日を問わず脅威をリアルタイムで検知
- 迅速な初期対応により被害拡大を防止

2

高度な専門知識を持つセキュリティ専門家による脅威分析と対処

- 最新の攻撃手法や未知の脅威に対応
- 高度な分析と的確な判断により、迅速な対処を実現
- 自社だけでは困難な高度な防御体制が可能

3

セキュリティ人材不足の解消と社内リソースの最適化

- 専門人材の採用・育成にかかる時間とコストを削減
- 社内IT担当者を本来の業務へ集中させ、生産性を向上

4

インシデント被害の最小化によるビジネス継続性の確保とコスト削減

- サイバー攻撃による事業停止リスクを軽減
- 復旧コストや信用の失墜といった損害を最小限に抑制
- インシデントによる被害額を最小化

MDR導入における課題

MDRサービスは多くのメリットがある一方、導入にはいくつかの課題や懸念事項があります。これらを事前に把握し対策することで、導入後のミスマッチを防ぎ、投資対効果を最大限に引き出すことが可能です。

No.

課題

主な懸念点

対策のポイント

1

コストやROI

導入・運用コストが予想以上に負担となる可能性がある

- 複数ベンダーから見積もりを取得し比較検討

- 自社のリスク低減効果や業務効率化を踏まえたROI(投資対効果)を事前に試算

2

柔軟性、カスタマイズ性

MDRは標準化されたプロセスが多く自社特有のセキュリティポリシーに完全には適合しない場合がある

- 自社の要件や運用ルールを明確化し、導入前にベンダーとのカスタマイズ可能な範囲を協議

3

ベンダーによるサービス品質のばらつきの可能性

アナリストのスキル、対応範囲、レポート品質などに差がある

- 導入実績、第三者評価、ユーザーの評判などから信頼性の高いベンダーを慎重に選定

MDRサービスの主要機能:セキュリティ運用をどう強化する?

MDRサービスは、企業のセキュリティ運用を多角的に支援する機能群を提供します。これらの機能を理解することで、MDRとは具体的にどのような活動で自社のセキュリティレベル向上に貢献するのかが明確になります。

リアルタイム監視とログ分析による脅威の可視化

MDRの中核機能は、24時間365日体制でリアルタイム監視です。企業内のログやアラート情報を常時収集・分析し、単体では見過ごされがちな異常の兆候や不審な挙動を相関的に検出します。

  • セキュリティ専門家が複数の情報を組み合わせて分析
  • 潜在的な脅威や不審な挙動を早期に発見
  • IT環境の全体像を可視化し、リスクの把握を支援

これにより、企業はセキュリティ状況をリアルタイムで把握し、迅速な意思決定が可能になります。

インシデント発生時の封じ込め、分析、復旧支援

インシデント発生、またはその兆候が検知された場合、MDRは迅速かつ的確に対応します。

  • 感染端末の隔離など、被害拡大を防ぐ封じ込め措置を実行または支援
  • 原因や影響範囲を特定する詳細なフォレンジック分析を実施
  • 分析結果をレポートとして提供し、復旧や再発防止策の立案を支援

これにより、企業は被害を最小限に抑えつつ、迅速な復旧と再発防止を実現できます。

失敗しないMDRサービスの選び方:導入成功のためのチェックポイント

MDRサービスの効果を最大限に引き出すには、自社に最適なサービスを選定することが不可欠です。本章では、MDRサービス選定時の重要なポイントとして、課題の明確化、サービス範囲とSLAの確認、ベンダーの専門性評価などを紹介します。

これらの観点を踏まえ、MDRの本質を理解し信頼できるパートナー選びを進めましょう。

自社のセキュリティ課題と導入目的の明確化

最初のステップは、自社が抱えるセキュリティ課題を正確に把握することです。

現状課題の例:

  • 深夜・休日の対応リソース不足
  • 高度な標的型攻撃への対策不備
  • 人材不足によるアラート分析の遅延

導入目的の例:

  • インシデント対応時間短縮
  • 未知脅威の早期発見
  • 運用コスト最適化

これらを明確化することで、自社に必要なMDRの機能やサービスレベルが見えてきます。

対応範囲、検知・分析能力、報告体制の確認

次に、サービスが提供する具体的な対応範囲と品質を確認します。

対応範囲:

  • 脅威の検知、分析、封じ込め、復旧支援など、どこまで対応可能か

技術・スキル:

  • EDR製品やAI活用状況、アナリストの分析能力や対応経験

報告体制・SLA:

  • 報告フロー、定期レポート内容、SLAでの対応目標時間の明記

これらを確認することで、期待するセキュリティレベルとサービス品質が得られるかを判断できます。

ベンダーの専門性、実績、サポート体制の評価

MDRは提供ベンダーの力量に依存するサービスです。以下の観点で見極めましょう。

  • 長年の運用実績や、多様な業種・規模の企業へのMDR導入事例の有無
  • 金融や医療など特定業界知識や規制対応の経験
  • 24時間365日のサポート体制、問い合わせ対応の速度と質
  • 第三者機関による客観的な評価や認定(例:ISO、SOC2、Gartnerなど)

導入事例とコストパフォーマンスの比較検討

自社と類似する導入事例や費用対効果の比較を参考に検討します。

  • 導入企業の課題、MDR導入による効果、具体的な成果や満足度を確認
  • 初期費用や月額利用料だけでなく、サービス範囲・質、期待効果を総合的に比較しコストパフォーマンスを評価
  • 複数ベンダーから提案を受け、比較検討することが賢明

他のセキュリティソリューションとの組み合わせ方

MDRサービスは、既存のセキュリティ対策や他のソリューションと組み合わせることで、さらに強固なセキュリティ体制を構築できます。

組み合わせ

補完関係とメリット

MDR × EDR

MDRがEDRのアラートを活用し、専門家が分析・対応。EDR単体では難しい判断や対応を補完。

MDR × SIEM

SIEMで収集・統合されたログをMDRが活用し、より広範な脅威検知と相関分析が可能に。

MDR × ファイアウォール/IDS/IPS

ネットワークレベルの防御と、MDRによるインシデント対応を組み合わせて多層防御を実現。

MDR × クラウドセキュリティ(CSPM/CWPPなど)

クラウド環境の脆弱性や設定ミスを検知し、MDRが対応を支援。クラウド利用企業に有効。

MDR × SOC(自社または外部)

SOCが監視・初動対応を行い、MDRが高度な分析や対応を担う役割分担が可能。

EDR、SIEM、SOC、XDRとの使い分け

各ソリューションとMDRの連携ポイントは以下の通りです。

  • EDR: MDRはEDRを活用し、24時間体制での監視・分析・対応を専門家が代行。EDRのアラートをもとに、より高度な判断と迅速な対応を実現します。
  • SIEM: MDRはSIEMに蓄積された情報を活用し、広範な脅威の検知や高度な分析を実施。SIEMの運用負荷を軽減し、分析精度を高める支援役としても機能します。
  • SOC: SOCの一部機能をMDRで補完、またはMDRを主軸にSOCをスリム化し、MDRを中核に据えた運用体制を構築するケースも増えています。
  • XDR: 近年では、XDRプラットフォームを活用したMDRサービスも増加。MDRがXDRのデータを活用し、より広範で統合的な脅威対応を実現します。

組み合わせることでのシナジー例

例えば、EDR導入済企業がMDRを追加導入すると、EDRアラート分析やインシデント対応をMDRに委託でき、EDR効果を最大化しつつ社内負担を軽減できます。また、SIEMとMDRを連携させれば、エンドポイント以外のログも活用した多角的な脅威分析が実現し、可視性と対応能力が向上します。

このように、MDRとは既存のツールやログ基盤を活かし全体のセキュリティレベルを引き上げることが可能です。

まとめ:MDRは企業のセキュリティ対策を次のレベルへ

本記事では、MDRとは何か、その基本から重要性、他のソリューションとの違い、導入メリット・デメリット、主要機能、選定ポイント、そして他のソリューションとの組み合わせ方まで、多角的に解説しました。サイバー攻撃の脅威が増大し、セキュリティ人材の不足が深刻な現代において、MDRは企業のセキュリティ運用を強化し、ビジネスを保護するための極めて有効な手段です。

自社のセキュリティ課題を正確に把握し、信頼できるMDRサービスパートナーを選定することで、24時間365日の高度な監視体制と迅速なインシデント対応能力を手に入れ、社内リソースを本来の業務に集中させることが可能になります。

この記事が、貴社にとって最適なセキュリティ対策を検討する上での一助となり、MDRを通じてセキュリティレベルを次のステージへ引き上げるきっかけになれば幸いです。

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