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【5分でわかる】SOCとCSIRTの違いを徹底解説!自社に最適なセキュリティ体制とは

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【5分でわかる】SOCとCSIRTの違いを徹底解説!自社に最適なセキュリティ体制とは
近年、サイバー攻撃による被害が事業継続を脅かす深刻な経営リスクとなっています。ランサムウェアや標的型攻撃などの脅威が高度化する中、インシデントへの迅速かつ的確な対応体制の構築は、すべての企業にとって喫緊の課題です。その対応体制の中核を担うのが「SOC(Security Operation Center)」と「CSIRT(Computer Security Incident Response Team)」ですが、両者はしばしば混同されがちであり、役割や目的を正しく理解することが重要です。
本記事では、まず結論として両者の違いを示し、その後でそれぞれの定義、連携の重要性、自社に合った導入パターンなどを詳しく解説していきます。

【結論】SOCとCSIRTの違いを簡潔に言うと?

SOCとCSIRTは、ともに企業のセキュリティ体制を支える重要な組織ですが、その役割が明確に異なります。

  • SOC:サイバー攻撃の「検知」と「分析」を担う技術部門
  • CSIRT:インシデント発生後の「対応」と「指揮」を担う全社的なチーム

両者は異なる専門性を持ちますが、連携することでインシデント対応力が最大化され、企業のセキュリティレベルを飛躍的に高めることができます。

SOCとCSIRTとは?それぞれの基本的な役割

効果的なセキュリティ体制を構築するためには、まずSOCとCSIRT、それぞれの基本的な役割を正しく理解することが不可欠です。

SOCとは?

SOCとは、企業のIT資産をサイバー攻撃から守るため、セキュリティイベントの監視・分析・初動対応支援を専門的に担う技術部門です。

主な業務:

  • セキュリティイベントの常時監視
  • 脅威の分析とインシデントの検知
  • 被害の最小化に向けた初動対応支援

ファイアウォール、IDS/IPS、EDRなどのセキュリティ機器やシステムからログを収集・相関分析し、潜在的な脅威を可視化します。検知されたインシデントはCSIRTにエスカレーションされ、連携して対応が進められます。

CSIRTとは?

CSIRTとは、インシデントが発生した際に、企業全体の対応を指揮・統制するチームです。技術部門だけでなく、経営層、法務、広報などと連携し、組織的横断的な視点でインシデントを収束させます。

主な業務:

  • インシデント対応の指揮・統制
  • 関係部署との連携と情報共有
  • 原因分析と再発防止策の策定

CSIRTは、SOCからの報告を受けて対応方針を決定し、経営層、法務、広報などビジネスに関わる全部門と連携しながら、インシデントを収束させ、事業継続と信頼の回復を目指します。

【比較表】SOCとCSIRTの違いを5つの観点で整理

SOCとCSIRTの違いをより深く理解するため、5つの観点から両者を比較します。

比較ポイント

SOC

CSIRT

主な目的

インシデントの早期発見

被害の最小化と再発防止

活動フェーズ

平時からの常時監視

インシデント発生後の対応

視点

技術的・ミクロな視点

組織的・ビジネス的なマクロな視点

必要なスキル

ログ分析、マルウェア解析、フォレンジック

プロジェクト管理、法務・広報知識

連携部署

インフラ部門中心

経営層、法務、広報など全社

なぜ、SOCやCSIRTが注目されているのか?現代インシデント対応の課題

SOCやCSIRTといった専門組織の必要性は、現代のサイバー攻撃の脅威と、企業が直面する課題から生まれています。

攻撃の高度化と「脅威検知」の困難さ

サイバー攻撃の手法は年々巧妙化・高度化しており、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃など従来の対策では検知が難しいケースが増えています。警察庁の発表によると、2024年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は114 件と高水準で推移しており、企業のセキュリティ対策が追い付いていない現状が浮き彫りになっています。 このような状況下で、膨大なログの中から攻撃の兆候を見つけ出すには、24時間365日の監視体制と高度な分析スキルが不可欠です。

出典:警察庁「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(2024年9月19日)」を基に作成 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R6kami/R06_kami_cyber_jousei.pdf

インシデント発生後の「対応」の複雑さ

インシデント対応は、単なる技術的な復旧作業に留まらず、以下のような全社的な対応が求められます。

  • 経営判断:事業継続への影響を評価し、重要な意思決定の実施
  • 法務連携:法規制や契約に基づく必要な法的措置の検討
  • 広報活動:顧客や社会への説明責任の遂行

これらの対応を円滑に進めるためには、CSIRTによる指揮・統制が不可欠です。

SOCとCSIRTの効果的な連携がインシデント対応力を最大化する

SOCとCSIRTは、それぞれが持つ専門性を連携させることで、インシデント対応の質とスピードを最大化できます。

インシデント発生時の連携フロー

インシデント発生時、SOCとCSIRTは以下のように連携して対応します。

  1. 検知・分析(SOC):SOCが脅威の兆候を検知し、その影響範囲や深刻度を分析
  2. 報告・エスカレーション(SOC → CSIRT):SOCは分析結果を基に、CSIRTへ正確かつ迅速に情報を共有
  3. 対応・鎮静化(CSIRT):報告を受けたCSIRTは、全社的な対応方針を決定し、関係各所へ指示を出しながら、インシデントの封じ込めと復旧を指揮

必要に応じて、CSIRTからSOCへ追加調査を依頼することもあります。

自社に必要なのはどっち?SOCとCSIRTの導入パターン

理想的には、脅威を「検知」するSOCと、インシデントに「対応」するCSIRTの両方を備えることが望ましいです。しかし、コストや人材の制約から、多くの企業は段階的に体制を整備していくのが現実的です。ここでは、企業の状況に応じた代表的な3つの導入パターンを紹介します。

SOCとCSIRTの導入パターン

導入パターン

向いている企業

メリット

1. CSIRTのみを設置

インシデント発生時の対応体制が未整備の企業

対応の「窓口」と「体制」を構築できる

2. SOC機能を導入

24時間365日の監視体制がなく、脅威の検知に課題を抱える企業

専門的な監視・検知能力を迅速に獲得できる

3. SOCとCSIRTを両方構築

十分な予算と人材を確保できる大企業や重要インフラ企業

理想的なセキュリティ体制を実現できる

パターン1:まずCSIRTを設置するケース

インシデント発生時に「誰が対応するのか」「どこに報告すべきか」と言った体制が整っていない企業に適しています。まずは対応の司令塔となる「窓口」と「責任体制」を明確にすることで、インシデント発生時の混乱を防ぎ、組織的な対応の基盤を築くことができます。

パターン2:まずSOC機能を導入するケース(外部サービスの活用も含む)

24時間365日の監視体制がなく、脅威の検知に課題を抱える企業に有効な選択肢です。インシデント対応の前提となる「脅威や攻撃を見つける」能力を、外部の専門サービスなどを活用して迅速に確保することで、セキュリティ対策の第一歩を踏み出すことができます。

パターン3:SOCとCSIRTを両方構築・連携させるケース

十分な予算と人材を確保できる企業や、高度なセキュリティレベルが求められる企業向けに最適な導入パターンです。「検知」から「対応」までを一貫して行える体制を構築することで、インシデントへの対応力を最大限に高め、組織全体のセキュリティレベルを強化できます。

SOC・CSIRT運用における課題と解決策

SOCやCSIRTを自社で運用する際、多くの企業が共通して直面する課題があります。ここでは、SOC・CSIRT運用における現実的な課題を整理し、それに対する有効な解決策を解説します。

共通の課題:専門人材の不足とコスト負担

高度なスキルを持つセキュリティ人材の確保は、世界的にも困難で、日本国内でも深刻な課題となっています。 経済産業省の調査によると、国内のサイバーセキュリティ人材は約11万人不足しているとされており、採用・育成のハードルは非常に高い状況です。こうした背景から外部の専門サービスを活用する「セキュリティアウトソーシング」の重要性が急速に高まっています。

出典:経済産業省「サイバーセキュリティ人材の育成促進に向けた検討会 最終取りまとめ」を基に作成 https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250514002/20250514002-2.pdf

解決策:外部サービス(アウトソーシング)活用

「人材」と「コスト」の課題を乗り越え、自社に最適なセキュリティ体制を現実的に構築するためには、外部の専門サービスを活用することが有効な選択肢です。すべての機能を自社で内製化するのではなく、必要な部分を外部の専門家に委託することで、効率的かつ柔軟な運用が可能になります。

SOC機能のアウトソーシング(SOCサービス/MDR)

SOCの運用には、24時間365日の監視体制と高度な分析スキルが求められます。これらを自社で整備することが難しい場合、SOCサービスやMDR(Managed Detection and Response)サービスを利用することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 専門家による高度な監視体制の確保
    自社では採用・育成が難しい専門家チームによる、24時間365日体制の監視と高度な分析を即座に導入可能。
  • コストの最適化
    高額なツールへの初期投資や専門人材の人件費を抑え、セキュリティ対策のコストを計画的に管理できる月額費用として最適化。
  • 最新の脅威インテリジェンスの活用
    ベンダーが保有する広範な脅威情報活用し、未知の攻撃にも迅速に対応。

CSIRT機能のアウトソーシング(構築・運用支援)

CSIRTは組織の司令塔としての役割を担うため、SOCのように機能全体を委託するケースは少ないですが、部分的な支援や専門領域でのサポートは非常に有効です。

  • CSIRT構築支援
    これからCSIRTを立ち上げる企業向けに、活動計画の策定、インシデント対応手順(プレイブック)の整備、メンバーのトレーニングなどを専門家が伴走支援。

インシデント対応支援(リテイナー契約)
インシデントの発生に備え、高度な専門家を予め確保しておく契約。実際に重大なインシデントが発生した際には、フォレンジック調査やマルウェア解析などの専門的支援を迅速に受けられる。

まとめ:SOCとCSIRTの違いを理解し、自社に最適なセキュリティ体制を構築しよう

SOCとCSIRTは、それぞれ「検知・分析」と「対応・指揮」という異なる重要な役割を担う専門組織です。どちらが優れているというものではなく、両者が連携することで初めて、企業のセキュリティ対応力は最大化されます。

  • SOCは技術的な視点から脅威を検知し、CSIRTは組織的な視点からインシデントを収束させる。
  • 自社の規模やリソースに応じて、段階的な導入や外部サービスの活用が現実的な選択肢となる。
  • 専門人材の不足やコストの課題には、アウトソーシングを活用することで柔軟に対応可能。

サイバー攻撃の脅威が日々進化する中で、企業が持続的に事業を展開していくためには、SOCとCSIRTの違いを正しく理解し、自社に最適なセキュリティ体制を構築することが不可欠です。本記事が、皆様のセキュリティ体制の見直しや新たな体制構築に向けた一助となれば幸いです。

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