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【5分でわかる】MDRとMSSの違いとは?自社に最適なセキュリティサービスの選び方

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【5分でわかる】MDRとMSSの違いとは?自社に最適なセキュリティサービスの選び方
サイバー攻撃の高度化・巧妙化に伴い、企業にとってセキュリティ対策は経営課題のひとつとなっています。中でも注目されているのが、MDR (Managed Detection and Response) と MSS (Managed Security Service) という2つのセキュリティアウトソーシングサービスです。
どちらも外部の専門家による支援を受けられる点では共通していますが、目的や対応範囲、得られる効果には明確な違いがあります。自社にとって最適な選択をするためには、両者の特徴を正しく理解することが不可欠です。
本記事では、企業のセキュリティ担当者や経営層向けに、MDRとMSSの具体的な違い、実践的な選定ポイント等をわかりやすく解説します。

【結論】MDRとMSSの違いを簡単に比較

MSSはファイアウォールやIDS/IPSなどのセキュリティ機器の運用・監視を外部に委託することで、日常的なセキュリティ業務の負担を軽減する包括的なセキュリティ運用サービスです。
 
一方、MDRは「脅威の検知(Detection)」と「対応(Response)」に特化したサービスであり、リアルタイムな監視、脅威ハンティング、インシデント対応など、より能動的かつ高度なセキュリティ運用を実現するサービスです。

MSSは“守りを固める”基盤、MDRは“攻撃に備える”即応体制と捉えると、その違いがより明確になります。 

比較ポイント

MSS (Managed Security Service)

MDR (Managed Detection and Response)

主な目的

セキュリティ機器の運用管理、ログ監視、脆弱性管理

脅威の検知・分析、迅速なインシデント対応・復旧支援

対応範囲

境界防御機器の監視・運用、ログ分析、脆弱性診断

エンドポイント、ネットワーク全体の監視、脅威ハンティング、インシデント調査

インシデント対応

アラート通知、関連情報の提供が中心。(対応は主に契約企業側)

封じ込め、駆除支援、復旧策の提案など、積極的な対応支援

向いている企業

セキュリティ運用負荷を軽減したい、予防策を強化したい企業

高度な脅威への対応力を強化したい、インシデント対応体制を整備したい企業

なぜ今、セキュリティアウトソーシングが重要視されるのか?

サイバー攻撃の高度化と専門家不足の実態

近年、ランサムウェアや標的型攻撃などのサイバー脅威はますます巧妙化しており、企業規模を問わず被害が報告されています。警察庁の発表によると、2024年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は114 件と高水準で推移しており、企業のセキュリティ対策が追い付いていない現状が浮き彫りになっています。

出典:警察庁「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(2024年9月19日)」を基に作成 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R6kami/R06_kami_cyber_jousei.pdf

また、経済産業省によると、国内のサイバーセキュリティ人材は約11万人不足しているとされ、専門知識を持つ人材の確保が困難な状況です。こうした背景から外部の専門サービスを活用する「セキュリティアウトソーシング」の重要性が急速に高まっています。

出典:経済産業省「サイバーセキュリティ人材の育成促進に向けた検討会 最終取りまとめ」を基に作成 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/n21a0000.pdf

セキュリティ対策における外部リソース活用の必要性

24時間365日の監視体制や高度なインシデント対応を自社だけで構築・運用することは、コスト面・人材面の両方で大きな負担となります。そのため、MSSやMDRのような専門サービスを活用することで、効率的かつ効果的にセキュリティレベルを向上させることが可能になります。

MSS(Managed Security Service)とは?

MSSとは、企業のセキュリティ機器やシステムの運用・監視を専門家に委託することで、日常的なセキュリティ業務の負担を軽減し、安定した運用を支援するサービスです。

主な役割:定常的なセキュリティ状態の維持・管理

MSSの主な役割は、既知の脅威に対する防御とセキュリティ状態の維持です。ファイアウォールやIDS/IPSなどの機器を適切に運用し、ログ監視や脆弱性診断を通じて、リスクの早期発見と対応を実現します。

提供される主なサービス

  • ファイアウォールやWAFの運用・保守
  • セキュリティログの収集・分析
  • 定期的な脆弱性診断
  • アラート通知とレポート提供

期待できる効果:運用負荷軽減、セキュリティレベルの底上げ

MSS導入の大きな効果は、情報システム部門の運用負荷軽減です。専門家が運用を代行し、社内リソースを最適化します。また、専門家による適切な運用と継続的な監視で、企業全体のセキュリティレベルが向上します。

MSSが向いている企業の特徴

  • セキュリティ専門担当者が不足している
  • 既存セキュリティ機器を有効活用したい
  • まずは基本的なセキュリティ体制を整えたい中堅・中小企業

MDR(Managed Detection and Response)とは?

MDRとは、企業のIT環境における脅威をリアルタイムに検知・対応することに特化したマネージドセキュリティサービスです。セキュリティ専門家チームが企業のIT環境から収集されるさまざまなログを24時間365日体制で監視・分析し、未知の攻撃や高度な脅威に対して迅速な初動対応を行います。

主な役割:プロアクティブな脅威ハンティングとインシデント対応

MDRの最大の特徴は、受け身ではなく能動的なセキュリティ運用にあります。核心的な役割は、ネットワークやエンドポイントに潜むマルウェアや不審な挙動を積極的に探し出し、インシデントの封じ込めから復旧支援まで一貫して対応します。

提供される主なサービス  

  • EDR(Endpoint Detection and Response)やNDR(Network Detection and Response)の運用
  • リアルタイムの脅威分析とアラート対応
  • インシデント発生時の原因調査、封じ込め、復旧支援
  • 脅威インテリジェンスの活用による高度な分析

期待できる効果:高度な脅威の早期検知、インシデント対応迅速化

MDR導入により、高度な攻撃や未知の脅威に対する検知能力が大幅に向上します。専門アナリストの監視と脅威ハンティングでインシデントを早期に察知し、迅速な初動対応が可能です。これにより被害を最小化し、事業継続性の確保や復旧コスト削減が期待できます。

MDRが向いている企業の特徴

  • 既存のセキュリティ対策に加え高度な脅威対応を求める企業
  • インシデント対応体制に不安がある企業
  • セキュリティ人材の確保が難しい企業
  • 金融・医療・インフラなど機密情報を扱う業種

【比較表】MDRとMSSの具体的な違い

MDRとMSSはどちらも企業のセキュリティ運用を支援するサービスですが、目的・対応範囲・活用技術・コストなど、さまざまな点で違いがあります。この違いを理解することが、自社に最適なサービス選定の第一歩です。

比較ポイント

MSS

MDR

主な目的

セキュリティ機器の運用管理、ログ監視、脆弱性管理

脅威の検知・分析、迅速なインシデント対応・復旧支援

インシデント発生時の対応

アラート通知、ログ提供が中心。対応は契約企業側が主導

封じ込め・駆除・復旧支援など、インシデント対応プロセス全体を積極的に支援

活用テクノロジー

ファイアウォール、IDS/IPS、SIEM、WAFなど

EDR、NDR、脅威インテリジェンスなど

監視対象

境界防御機器、サーバーログ、ネットワークアラート

エンドポイント、ネットワークトラフィック、クラウド環境など広範囲

導入コストと運用負荷

一般的に安価な場合が多い。既存機器を活用できるケースが多い

高額傾向だが、対応範囲と支援内容を考慮するとトータルで効率的な場合も

比較ポイント1:サービスの主目的の違い

MSSは、既存のセキュリティ機器を活用し、日常的な運用と予防的な管理を行う「維持・予防」が主な目的です。一方、MDRは、未知の脅威を「検知」し、迅速に「対応」することに特化しており、より高度なセキュリティ体制を構築できます。

比較ポイント2:インシデント発生時の対応プロセスの違い

インシデント発生時、MSSでは主にアラート通知とログ提供が中心で、実際の対応は契約企業側が担うケースが多いです。MDRは検知から封じ込め、駆除、復旧支援まで専門チームがサポートするため、対応のスピードと正確性が大きく向上します

比較ポイント3:主として活用するテクノロジーと監視対象の違い

MSSはファイアウォール、SIEMなど境界防御型の技術を中心に運用されます。一方、MDRはEDR、NDRなど内部脅威の検知に強い先端技術を活用し、PC、サーバー、クラウド環境など広範な対象をカバーします。

比較ポイント4:導入コストと運用負荷

MSSは比較的導入しやすく、既存のセキュリティ資産を活かせる点が魅力です。MDRは高度な分析基盤と専門人材による運用が必要なため、コストは高めですが、インシデント対応まで含めたトータルコストを考慮すると効率的な選択肢となる場合もあります。

自社に最適なセキュリティ体制は?具体的な選び方と判断基準

MDRとMSSのどちらを選ぶべきか、あるいは両方を組み合わせるべきかは、企業のIT体制・リスク許容度・予算・業種特性によって異なります。以下の判断基準をもとに、自社に最適なセキュリティサービスを選定することが重要です。

判断基準①:自社のIT体制とセキュリティレベル

  • IT部門が小規模でセキュリティ先任者がいない、または基本的な運用体制を整えたい段階であればMSSの導入が効果的です。
  • 一方、既にSIEMなどのログ管理基盤やEDRなどのエンドポイント対策ツールを導入済みで、より高度な活用やプロアクティブな対応を目指す企業にはMDRの導入が適しています。

判断基準②:リスク許容度と業種特性

  • リスクをある程度許容でき、まずは基本的な防御体制を整えたい企業にはMSSが適しています。
  • 金融、医療、製造業など、機密性の高い情報を扱う業種では、情報漏洩や業務停止のリスクが大きいため、高度な検知・対応力を持つMDRが推奨されます。

判断基準③:予算と導入体制

  • MSSは比較的低コストで導入可能であり、既存のセキュリティ機器を活用できるケースも多いため、コストを抑えたい企業に適しています。
  • MDRは導入・運用コストが高めですが、インシデント対応まで含めたトータルのセキュリティ強化を考えると、費用対効果が高い選択肢になる場合もあります。

導入前に確認すべきチェックリスト

最適なサービス選定のため、導入前に以下を明確にします。

  • 自社のセキュリティ課題は何か?
  • インシデント発生時の対応体制は整っているか?
  • どの程度の可視化・自動化が必要か?
  • 社内に十分なセキュリティ人材がいるか?

よくある質問(FAQ)

  • Q. MSSとMDRは併用すべきですか?
    A. はい、併用することでより強固なセキュリティ体制を構築できます。
    MSSで日常的なセキュリティ運用をカバーしつつ、MDRで高度な脅威検知とインシデント対応を補完することで、予防と対応の両面を強化できます。予算やリスクレベルに応じて段階的な導入も検討可能です。
     
  • Q. 中小企業でもMDRは必要ですか?
    A. 必要です。中小企業もサイバー攻撃の標的になります。
    セキュリティ人材の確保が難しい中小企業にとって、専門家によるMDRサービスは有効な選択肢です。最近では中小企業向けにスケーラブルなMDRプランを提供するベンダーも増えており、導入のハードルは下がっています。
     
  • Q. 導入までにどれくらいの期間がかかりますか?
    A. 数週間~数か月が一般的です。
    導入期間は企業のIT環境や選定するサービスの範囲、プロバイダーによって異なります。通常は、要件定義→設計→導入→テスト→運用開始と進みます。詳細はサービス提供事業者に確認しましょう。
     
  • Q. SOCやEDRとの違いは?
    A. SOCやEDRはMSS・MDRと連携する構成要素です。
    SOCはセキュリティ監視・対応を行う組織や体制の総称です。MSSやMDRの一部として機能することもあります。EDRはエンドポイントの脅威を検知・対応する「ツール」です。MDRはEDRを活用し、専門家が分析・対応まで行うサービスとして提供されます。

関連記事:【徹底比較】MDRとSOCの違いとは?自社に最適な選び方を解説
関連記事:【初心者向け】MDR・EDR・XDRの違いと使い分けのポイント

まとめ

本記事では、セキュリティ対策強化の選択肢であるMDRとMSSの違い、特徴、選定ポイントについて詳しく解説しました。

  • MSSはセキュリティ機器の運用やログ監視など、日常的なセキュリティ業務を効率化するサービス
  • MDRはリアルタイムな脅威検知とインシデント対応に特化し、高度な攻撃への即応体制を構築するサービス

どちらが適しているかは企業のIT体制・リスク許容度・業種・予算によって異なります。自社の課題と目標を明確にし、「どこまで守るべきか」「どこまで対応できるか」を見極めたうえで最適なサービスを選定しましょう。 本記事が貴社のセキュリティ向上の一助となれば幸いです。

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